「コールセンターは人工知能(AI)に仕事を取って代われるのか」
去年ニュースになることも多かったですが、コールセンターの仕事は将来AIが代行すると予想されています。音声確認などの技術が進むにつれ、AIがコールセンターの業務にも入ってくることは間違いないと考えられますが、完全にとって代わられるのでしょうか。
「AIがコールセンターにもたらす効果と課題」、そして、「コールセンターにおけるITシステムのAI化の今後について」ご紹介していきます。
目次
AI導入の状況
「AIはオペレーターに取って代われる」と言われていますが、まだAIがとって代わったという話を聞くことはありません。現在はまだ予想図が先走りしている程度で、ルールベースのチャットボットを設置している企業が増えてきたという印象。また、ルールベースのチャットボットを、AIと言ってしまうのはいかがなものかとは感じます。
コールセンターにおけるAI化について、「お客様がオペレーターと会話していると思っているが、実は、AIが自動対応している」そんなイメージが一般的だと思います。そのために必要な技術が「音声確認」です。
音声確認技術を利用し、オペレーターに代わり自動応答するには、一般的に以下のようなことが必要です。
・お客様の音声のキャプチャーを取得する
・音声キャプチャーを音声認識エンジンへ送る
・音声のテキスト化を行う
・テキスト化したデータを自然言語処理エンジンに送る
・テキストの内容を理解して、テキストに対する回答を送る
・回答テキストを音声合成し、お客様へ音声を送る
AIがお客様の質問に対してどれくらいの正確さで回答するかの前に、お客様の発している言葉をどれだけ正確にテキスト化できるのかが重要です。
一般的にはコールセンターのオペレーターなど丁寧な話し方をする場合は平均80%~95%ほどになり、内線通話やお客様側など、くだけた話し方の場合は平均50%~80%ほどです。オペレーターとお客様、それぞれの立場によっても認識率が変わってきます。コールセンターでは、ヘッドセットを付けており、口元にマイクがあるのできれいに音声をとることがしやすいです。反対にお客様は、外で携帯電話から電話してきた場合、ノイズが入ってしまい、音声自体が正しく入ってきません。
音声確認の問題は、音声認識エンジンの正確さではなく、その前の段階の通話録音の問題があることが分かります。
次は、お客様側の自然言語の課題についてご紹介していきます。
お客様側の自然言語の課題
コールセンターでは、品質管理や対話分析の目的で通話音声を文字に打ち起こすことがあります。その場合、お客様が話した内容をテキスト化した文章を読んでも意味が分からないことがあります。
・伝えたいことが事前に整理されておられず、支離滅裂な話し方
・「あれ」「それ」といった代名詞
・地域によって異なる訛り
対応するオペレーターは、前後の文章を読み取ったり、事前に得ている知識や経験をもとに想像力を働かせながら、相手の話を整理し、くみ取ったりしながら対応する。この部分については、まだAIが追いつくまでにはかなりの時間が必要だと考えます。
AIとオペレーターが共存するコールセンター
現在は、完全にとって代われることはなく、オペレーターをさまざまなところで支えてくれるパートナーとしての役割を果たしてくれるのではないかと考えます。
「AI=オペレーターが不要」と思われている人も多く、反射的にAI導入を拒否されている人も多いが、自分たちの事を助けてくれる仲間だと思って、取り組んでみることをお勧めします。
今後のコールセンターに必要なシステム
他のコールセンターとの差別化となるAIと連携しているITシステムをご紹介します。
ACD、ⅼVR
ACDやⅼVRは、CTIを導入しているコールセンターにおいては、今では必要なスキルです。
ただ、将来的な視点で考えると、導入しているⅼVRなどが、AIエンジンや音声確認などの外部システムと臨機応変に連携できる答えであるか、という視点で選定していく必要があります。
通話記録
コールセンターにおける通話録音システムの導入率は95.3%と入れていないコールセンターの方が珍しいです。
しかし、通話記録はゴールではなく、コールセンターのAI化にとっては1プロセスです。現在使っている通話録音サービスが音声確認にも対応しているのか、今後対応予定なのか、確かめる必要があります。ただ、オンプレの箱の中に音声データを保存して、何かあった場合だけ引き出せばいいのかという程度の目的で通話録音しているのは不十分です。
チャットボット
チャットボットを導入しているコールセンターは、非常に増えています。今後導入していくコールセンターもだんだんと増えていきます。注意するべきことは、チャットボットの導入によってコールセンターの省人化につながるとは必ずとは言えません。必ず、チャットボットですべての対応を簡潔にできるだけではなく、発展してオペレーターに引き継がれるものもあります。また、チャットボットは新しい利用者からのお問合せを増やすことができます。新しい利用者の獲得を目的とし、チャットボットを導入することを検討してみるのもいいでしょう。
今後導入が求められるシステム
RPA
去年くらいからRPAがコールセンターにおいてもトレンドの1つになっています。導入している、または検討しているコールセンターも多いのではないでしょうか。
RPA導入企業でよく耳んするのは「RPA導入したけど、費用対効果が悪い」といったものです。ポイントは以下のような方法でしっかりと進めることです。
1.業務フォローの整理
2.業務フォローの回線効果の算出
3.RPAの導入
4.四RPA浸透
大切なことは、自社内でまずは業務フローを整理して、改善が必要な業務、加えて改善効果が高そうな業務をはっきりさせることです。RPAの業者でも業務フロー改善の知識提供をサービスとして行っているところも多いですが、大変だと思います。まずは、自社内でやってみましょう。この作業を適当にやってしまうと「RPAを入れてみたけど、思ったより業務が楽にならない」となってしまいます。
音声確認
音声確認は、コールセンターに限らず、導入企業が増えています。
重要なことは、音声のテキスト化自体を目的としないで、テキスト化したデータをどのように活用したいかをはっきりさせておきましょう。
通話録音だけではなく、テキスト化もできるようになっていてテキスト化させたい理由はお客様によってさまざまです。
ボイスボット
チャットボットで使用しているエンジンを利用して、音声合成のサービスの導入も今後のトレンドになると思われます。ⅼVRで音声を流すのではなく、あくまでもお客様と会話形式でQAをやり取りするものです。
チャットボットを選定するにあたって、音声合成サービスとの連携を考えたサービス導入がいいと思われます。
まとめ
以上のようにAIの技術は今後ますます発達していき、コールセンター業務における効率化に貢献していくでしょう。
しかし、AIではなく実際にオペレーターが対応するからこそ良いシーンもたくさんあります。全てをAIに任せられる時代はまだ遠く、やはりオペレーターの存在は重要です。AIとオペレーターの役割分担を見極めることが大切です。